近年、気候変動による自然災害は台風だけでなく、ゲリラ豪雨や集中豪雨といった大雨によるものが増え、大きな被害をもたらしています。
JAFの調査によると、台風やこれらの大雨によって冠水や車両故障といった被害が増え、そこから遭難するケースも発生しているそうです。
ここでは、車の運転中に大雨に遭遇したら注意すべき点や、車が水没してしまった際の脱出方法などをまとめています。
いざという時に慌てなくてもいいように、ぜひチェックしておいてください。
運転中に大雨・台風に遭遇したら?
運転中に台風による大雨や突風、集中豪雨やゲリラ豪雨に遭遇したら何に注意すべきなのでしょうか。
いくつかのポイントに分けて詳しく解説していきます。
雨がひどくなってきたら停車する
まず大前提として、大雨の中で運転し続けるのは危険です。
気象庁のホームページには、「1時間に50ミリ以上の降雨量の中での車の運転は危険」という記載があります。
天気予報などの気象情報をチェックし、こういった大雨の予報がある場合は、できるだけ車の運転を避けるようにしましょう。
運転中にひどい雨が降ってきた場合は無理に走行を続けようとせず、一旦停車して雨が弱くなるのを待つようにしましょう。
しかし、待機のために道路の左端に寄って停車をすると、大雨による視界の悪さなどから、後続車に追突されてしまう危険性もあります。
近くに駐車場などがないかを探し、できるだけ安全な場所に停車するようにしましょう。
低い場所は避けて運転する
都市部に多いアンダーパス構造の道路やすり鉢状の道路などは、地面より低くなっているため少しの雨量でも水が溜まりやすく、冠水しやすい傾向にあります。
また、こういった道路は冠水しても分かりづらく、冠水に気づかずに進入したら、車が突然浮き上がってしまうといったケースも少なくありません。
浮き上がった後、水深が深い場所では車は徐々に沈んでいってしまいます。
台風時の運転や、運転中に大雨に遭遇した際は、アンダーパスや周囲よりも低い場所を通るルートは極力避けるようにしましょう。
多少遠回りになってしまっても、安全を第一に行動することが大切です。
川沿いは避けて運転する
台風時の運転や、運転中に大雨に遭遇した際は、台風や大雨による急な増水で河川から水が溢れ出す可能性があるため、川沿いを走行することは大変危険です。
洪水に巻き込まれないよう、できるだけ川から離れたルートを通るようにしましょう。
車で増水した川の様子を見に行き、車ごと流されてしまう事故も発生しています。
大雨や台風の時は、車であっても絶対に川に近づかないようにしましょう。
崖の近くは避けて運転する
大量の雨が降ることで地盤が緩むと、崖崩れや土石流などの土砂災害が発生しやすくなります。
台風時の運転や、運転中に大雨に遭遇した際は、こういった土砂災害が起きる可能性が高くなるため、崖の近くは車で走行しないようにしましょう。
これらの土砂災害に遭遇してしまった場合、車が土砂に巻き込まれるだけでなく、土砂によって道路が寸断され、孤立してしまう可能性もあります。
台風時の運転や、運転中に大雨に遭遇した場合は、土砂災害の恐れのある場所は避けて運転するようにしましょう。
強い風に注意しながら運転する
台風などの影響で風速が25メートル以上になると、強風によって車が横転する確率が高くなります。
気象庁のホームページには、「風速25メートル以上の風は走行中のトラックが横転するくらいの強さ」という記載があります。
トラックが横転するほどの風ということは当然、普通車や軽自動車はさらに横転する可能性が高いということです。
台風時の運転や、運転中に強い風を感じた場合は、速度を落としてゆっくり運転するようにしましょう。
- ビルとビルの間
- トンネルの出口
- 橋の上
- 海沿い
- 山の谷間
これらの場所では、地形によってさらに風の威力が増します。
横風の影響を受けやすく横転の危険性が高まるため、台風時や強い風を感じた場合は、極力避けて運転することが望ましいです。
道路が冠水している可能性があるときは
進もうとしている先の道路が冠水しているかも、と思った時は、一度道路脇に車を停めて水位を確認するようにしましょう。
車は、マフラーまで浸水してしまうと排気ができなくなり、エンジンが止まってしまう可能性が高いです。
マフラーの位置は地上高20cm前後であることがほとんどで、幹線道路の縁石の高さは約15cm、一般的なガードレールは下の部分までが約60cmとなっています。
この高さを基準として考え、マフラーよりも確実に水位が高い場合は無理に先へ進まず、来た道を引き返すようにしましょう。
どれくらいの水深まで走行できるのかは、車種やタイヤの状態などによって異なります。
「前の車が走行できているから大丈夫」と思わず、危険を感じたら迷わず迂回するようにしましょう。
冠水した道路に入る必要がある場合
大前提として、台風や大雨によって冠水している道路には入らないようにしましょう。
水深が分からず、何が沈んでいるのかも分からない、路面の状態が確認できないような冠水した道路を走行することは非常に危険です。
とはいえ、どうしても冠水した道路に入らなければいけない状況に陥るケースもあるかと思います。
冠水した道路を走行する際に注意すべき点について、詳しく見ていきましょう。
運転はゆっくりと
冠水した道路を走行する際に起こり得るのは、エンジンの内部に水が入り、エンジンが大破して走行不可になってしまうことです。
JAFが実際に行ったテストでは、冠水した道路を走行する際、速度を上げて一気に走り抜けるよりも、ゆっくり走った方がエンジンが止まるリスクが少ないことが証明されました。
速度を上げて走行すると、車両が跳ね上げた水が吸気口からエンジン内部に入ってしまう可能性が高くなります。
また、冠水した道路を勢いよく走行した場合、車が水面に浮いてしまうことがあります。
車が浮いてしまうともう前後に進むことはできなくなり、浸水や水没へとつながりやすくなります。
冠水した道路を走行する必要がある時は焦ってしまいがちかと思いますが、気を付けながら慎重に、ゆっくりと運転するようにしましょう。
アイドリングストップはオフにする
マフラーが水に浸かる位置まで道路が冠水している場合、車の排気量よりも水圧が強くなり、排気ができずにエンジンが止まってしまう可能性が高いですが、エンジンがかかっている状態であれば排気圧により、ある程度の水圧まではエンジン内部まで水が侵入してくることはありません。
しかし、最近の車両にはアイドリングストップが標準装備されていることが多く、車が停止しエンジンが止まると、エンジン内部まで浸水してしまう可能性があります。
冠水している道路を走行する場合は、アイドリングストップはオフにしておくようにしましょう。
立往生の可能性がある場合は窓を開けておく
冠水した道路で立ち往生する可能性がある場合は、窓を開けておくようにしましょう。
水深の深い所で車が止まってしまうと、水圧でドアが開けにくくなります。
JAFの実験によると、水深が60cmに達した場合、ドアの開閉には通常の5倍以上の力が必要となることが分かっています。
お年寄りや女性、子どもには開閉が難しく、ミニバンのスライドドアなどの場合は、男性でも開閉が難しいと言われています。
ドアを開けての脱出が不可能になる前に、窓を開けて脱出経路を確保しておくようにしましょう。
運転中に車が水没してしまった時の脱出方法
台風時の運転や、運転中に大雨に遭遇した場合、車が水没してしまう可能性は十分に考えられます。
ここからは運転中、車が水没してしまった時の対処法をご紹介します。
運転している車が水没してしまったら当然慌ててしまうと思いますが、落ち着いて冷静に行動することが大切です。
ドアが開くならドアから脱出
浮力によって後輪が浮いている場合、ドアが開けられるのは水深30cmまでだと言われています。
水深が60cmを超えた場合、自力でドアを開けることは困難になりますが、後輪も沈み、完全に水没している状態であれば時間はかかるものの、なんとかドアを開けることが可能となります。
これは、車内外の水圧の差によるもので、車内に水がある程度侵入してくるのを待てば車内外の水圧差が小さくなり、ドアを開けることが可能となるのです。
しかし、後輪も浮くほどの水深に入り、水没していく車内で冷静でいることは難しいですよね。
また、万が一流れがある場合はコントロールが効かず、ドアを開けるのが難しくなる可能性も考えられます。
パワーウィンドウは開かない可能性がある
ドアが水圧で開かず、車が完全に水没するまで待つのは怖いという場合、当然、窓からの脱出を考えますよね。
水位よりも窓の位置が高い場合、パワーウィンドウが開くならシートベルトを外して窓を開け、天井をよじ登るようにして脱出しましょう。
しかし、電気系統が水によってショートしてしまった場合、パワーウィンドウが作動せず、窓が開かなくなってしまう可能性が高いです。
窓ガラスを割って脱出する
水圧によって車のドアも窓も開かない場合、窓ガラスを割って脱出しましょう。
車の窓ガラスは事故などの際、ケガをしないように破片が飛び散らないように作られています。
ヘッドレストや小銭を使って窓ガラスを割る方法もありますが、慌てている時にこれらのもので頑丈な車の窓ガラスを割ることは困難です。
この時に有効なのが「緊急脱出用ハンマー」です。
高級車などには助手席側の足元などに標準装備されていることもあります。
まずは車に装備されているかを確認し、ない場合は2,000~4,000円程度で購入できるので、車内に装備しておくようにしましょう。
フロントガラスは割れにくい加工がされているため、「緊急脱出用ハンマー」を使って窓ガラスを割る時は、サイドウィンドウまたはリアウィンドウを割るようにしましょう。
脱出後は足元に注意
車から脱出できたら、急いで避難したいですよね。
しかし、水が濁っていると路面が見えず、マンホールや側溝などの境界線が見えないため危険です。
脱出後はいきなり冠水路に出るのではなく、足を浸けて水深を慎重に測りながらゆっくりと足をつき、進んできた方向に戻るようにしましょう。
何が落ちているのか、路面がどうなっているのか分からない道を歩いて避難するよりは、ここまで走行することができていた道を戻る方が安全です。
また、水たまりが濁っているところは、マンホールの蓋が外れていることもあり得ます。
急に飛び出さず、周りの状況をしっかり見て、ゆっくりと歩いて避難するようにしましょう。
まとめ
大雨や台風で道路が冠水している場合、どうしても必要な場合を除き、冠水した道路には入らないようにしましょう。
冠水した道路に入ることは、車が水没してしまう危険性があるだけでなく、車にも大きなダメージを与えることとなります。
また、水没した車にエンジンをかけると、感電したり発火する危険性があります。
水没後の車は自分で無理に動かさず、保険会社やJAFなどに連絡し、専門家に動かしてもらうようにしましょう。
ここまで台風時の運転や、運転中に大雨に遭遇した際の注意点についてお話ししましたが、台風や大雨による危険が少しでもある場合、できる限り運転しないことが一番重要です。
天気予報などの気象情報をこまめにチェックし、台風や大雨の可能性がある場合は、できる限り車の運転を避けるようにしましょう。