冷却水はエンジンを正常に動かすために欠かすことができないものであり、冷却水が漏れた状態で走行を続けると、重大なトラブルを引き起こす恐れがあります。こちらでは、冷却水の漏れを確認する方法や冷却水が漏れてしまう原因、修理にかかる費用などについて詳しく解説していきます。
冷却水とは?
まずは、冷却水が果たす役割や、冷却水が漏れることによって車にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
冷却水の役割
冷却水はエンジンの内部を循環し、エンジンにこもった熱をラジエーターまで運ぶことで、高温になったエンジンを冷やし、正常な状態に保つ役割を果たしています。さらに、冷却水には防錆剤や不凍液が含まれているため、循環することでエンジン内部の金属部分の錆や凍結を防ぐ役割も果たしています。
冷却水が漏れるとどうなる?
車のエンジンは燃料を燃焼させて動くため、エンジンを始動すると内部は非常に高温になります。そのため、エンジンを冷やしている冷却水が漏れてしまうとエンジンが高温のままとなり、オーバーヒートやエンジン焼き付きの原因となります。また、冷却水が漏れることで防錆機能や不凍機能が働かなくなり、放熱機能が低下したりラジエーターの故障につながる恐れもあります。
冷却水漏れの確認方法
冷却水が漏れている場合、すぐに対処する必要があります。では、冷却水が漏れているかどうかは、どのように確認すればいいのでしょうか。冷却水漏れが疑われる現象や、普段から冷却水漏れが起こっていないかを確認する方法をご紹介します。
冷却水の量を確認する
冷却水が漏れている場合、冷却水が極端に減っていることが考えられます。冷却水の残量は、リザーバータンクを見ることによって確認できます。冷却水の液面がリザーバータンクの「UPPER / LOW」の目盛りの間にある状態が適量のため、明らかに冷却水が減っている場合は冷却水漏れを疑いましょう。
リザーバータンクを見て冷却水の残量を確認する場合は、エンジンが冷えている状態で行わなければなりません。エンジン始動時、冷却水の水温は100℃近くまで上がるため、エンジンが冷える前にラジエーターキャップを開けると、高温の冷却水や蒸気が噴き出す恐れがあり大変危険です。
警告灯・水温計を確認する
冷却水が漏れている場合、エンジンの熱を吸収しきれなくなり、冷却水の水温が上がってしまいます。冷却水の水温が上がると水温計の異常を知らせる警告灯が点灯し、水温計の針がHマークに近づきます。つまり、水温計の針がHマークの手前にある場合はオーバーヒートを起こす恐れがある状態、Hマークを超えている場合はオーバーヒートが起きている状態を表しています。水温計の警告灯が点灯し、水温計の針がHマークに近づいている場合は、安全な場所に停車して冷却水の残量を確認するようにしましょう。
色の付いた水が車体の下から漏れている
冷却水には防錆剤や不凍液が含まれているため、赤色や緑色、青色などの色が付いています。そのため、車体の下からこれらの色が付いた液体が漏れている場合は、冷却水が漏れている可能性が非常に高いです。エンジンが十分に冷えるまで待ち、冷却水の残量を確認するようにしましょう。
車内外から甘い匂いがする
冷却水の主成分である「エチレングリコール」は甘い匂いがするため、車内外で甘い匂いがした場合は、冷却水が漏れている可能性があります。何も食べていないにもかかわらず走行中に甘い匂いがする場合は、安全な場所に停車し、車体の下から色の付いた液体が漏れていないかなどを確認しましょう。
冷却水はどこから漏れる?原因は?
冷却水の漏れはどこから発生するのか、その原因と併せて見ていきましょう。
ラジエーター本体
エンジンの内部から熱を奪い、高温になった冷却水は、車の前部分に設置されているラジエーターで冷やされ、再びエンジンに戻ってエンジンを冷却する仕組みになっています。そのため、ラジエーター本体が損傷し、穴などが開いてしまった場合、そこから冷却水が漏れ出てしまいます。ラジエーターは、走行中に下から石が当たったり、障害物などを乗り越えようとしてぶつけてしまったことなどによって損傷してしまうことがあります。
ラジエーターホース・ヒーターホース
冷却水の通り道であるラジエーターホースや、エンジンから室内のヒーターコアにつながるヒーターホースはゴムでできているため、経年劣化が進むとひび割れや腐食を起こしやすくなっています。ラジエーターホースやヒーターホースのゴムが劣化してしまうと、そこから冷却水が漏れる原因となります。
ラジエーターキャップ
ラジエーターキャップは、ラジエーター内の圧力が規定圧力以上にならないように制御し、冷却水の温度が100℃を超えても沸騰しないようにするための重要な部品です。経年劣化などによりラジエーターキャップが損傷してしまうと、ラジエーター内の圧力が制御できなくなり、冷却水漏れの原因となります。ラジエーターキャップは傷みやすいため、5年を目安に交換するようにしましょう。
ウォーターポンプ
ウォーターポンプは冷却水を循環させる役割を果たしているため、経年劣化などにより損傷してしまうと、そこから冷却水が漏れる原因となります。ウォーターポンプは、走行距離10万キロ、または新規登録から10年を目安に交換するようにしましょう。
冷却水が漏れたときの応急処置
走行中や遠出した際などに冷却水が漏れていることに気付いた場合、どのように対処したらいいのでしょうか。こちらでは、冷却水が漏れている場合の応急処置をご紹介します。ただし、ご紹介するのはあくまでも応急処置であるため、冷却水漏れが起きた場合は、早めに修理に出すようにしましょう。
水漏れ防止剤を使用する
走行中に冷却水が漏れていることに気付いたら、カー用品店やホームセンターで売られている水漏れ防止剤をラジエーターに注入することで、冷却水の漏れを一時的に止めることができます。水漏れ防止剤には、主に下記の3種類があります。
- 冷却水の粘度を上げるもの
- 空気に触れると固形化する微繊維型のもの
- 冷却水を科学的に固める微金属型のもの
これらは車の種類に応じて使い分ける必要があるため、購入前に対象車種を確認するようにしましょう。
水漏れ防止剤は冷却水が漏れ出ている穴を一時的に塞ぐことができますが、穴が大きかったり亀裂が入ってしまっている場合は、穴が塞がらないこともあるため注意が必要です。
冷却水を継ぎ足す
水漏れ防止剤を使用しても穴が塞がらず、冷却水が漏れてしまう場合は、冷却水を継ぎ足しながら走行する方法もあります。補充用の冷却水も、水漏れ防止剤と同じくカー用品店やホームセンターなどで購入することができるため、冷却水が少なくなってしまう前に補充しながら走行するようにしましょう。ただし、補充の際に注意しておきたいのが、入っている冷却水と同じ色の冷却水を補充するということです。また、冷却水にはそのまま使用できる補充用と水道水で薄めて使用する原液がありますが、応急処置の場合は補充用を使用するようにしましょう。
冷却水が漏れている場合の修理・交換費用
冷却水が漏れている場合は、水漏れが発生している箇所の修理や交換を速やかに行う必要があります。冷却水漏れの原因はラジエーターの損傷によるものがほとんどですが、部品の修理や交換にかかる費用はどれくらいなのでしょうか。
ラジエーターの修理費用
冷却水漏れの原因がラジエーターの小さな穴によるもので、損傷の程度が軽い場合は、溶接修理だけで済むこともあります。この場合は交換する新しい部品代が必要なく、工賃だけが必要になるため、修理費用の相場は10,000~25,000円になります。ただし、ラジエーターの修理費用は、ディーラーや整備工場のどちらで修理を行うかによっても異なります。一般的に、ディーラーよりも整備工場に修理に出した方が、修理費用が安くなる傾向にあります。
ラジエーターの交換費用
ラジエーターの交換にかかる費用は、どの箇所を交換するかによって異なります。ホースやタンクの交換だけで済む場合は、部品代と工賃を合わせて20,000~30,000円が相場になります。しかし、損傷が激しく、ラジエーター本体の交換が必要になる場合は、部品代と工賃を合わせて30,000~80,000円ほどかかります。輸入車や高級車の場合は、部品代が高額になることが多く、交換費用がさらに高くなりやすいです。また、交換する部品が純正品か社外品かによっても費用は異なります。ディーラーに交換を依頼する場合は、工賃が高くなるのに加えて純正の部品を使用するため、交換費用が高くなりやすい傾向にあります。整備工場などでは、純正の部品にこだわらず、社外品や中古の部品などを使用してくれることもあるため、交換にかかる費用を安く抑えることができます。
まとめ
冷却水は、エンジンを正常な状態に保つ重要な役割を果たしています。冷却水が漏れている状態で走行を続けると、エンジンがオーバーヒートを起こしてしまう恐れがあり大変危険です。車検だけでなく、定期的に量が減りすぎていないかなどを確認するようにしましょう。
ラジエーターが損傷し、冷却水が漏れてしまっている場合は、修理費用や交換費用が高額になってしまうこともあります。長く乗った車などの場合は、これを機に乗り換えを検討してみてもいいかもしれませんね。