近年、高齢ドライバーによる交通死亡事故をニュースなどで目にする機会が増えました。
交通死亡事故件数は2017年から減少傾向にあるのに対し、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は増加し、若年運転者の2倍の件数となっています。
それに伴い、運転免許証の自主返納数が増加し、運転免許証の代わりとして使える運転経歴証明書の活用も広まっています。
ここでは、免許返納手続きの方法や、運転経歴証明書を持つことによって受けられる特典などについて詳しく解説していきます。
免許返納手続き、どうするの?
1988年4月に運転免許自主返納制度が導入されました。
これは、免許が不要になった人や、高齢になり身体機能に不安を感じるようになった人などが、自主的に運転免許証を返納することができる制度のことです。
警察庁がまとめた運転免許統計によると、2019年の運転免許返納数は前年比42.7%増の60万1022件となり、過去最多となったということです。
運転免許証を自主返納しようと思ったら、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
免許返納手続きに年齢制限はある?
運転免許返納手続きには、何歳からしかできないなどといった年齢の制限はありません。
運転免許証を持っている人であれば、何歳からでも自主返納をすることができます。
また、何歳以上の人は必ず運転免許証を自主返納しなければいけないという決まりもありません。
ただし、運転免許の停止・取り消しの行政処分を受けている方や、その基準に該当する方は、運転免許証の自主返納をすることができません。
免許返納手続きの方法
免許返納手続きは、お住まいの地域の管轄の警察署や、最寄りの運転免許センターで行うことができます。
また、秋田県や高知県など、地域によっては交番や駐在所でも免許返納手続きができるところが増えてきています。
しかし、交番や駐在所でも免許返納手続きを行うことができる地域はまだまだ少ないので、近くの交番に事前に問い合わせて確認するようにしましょう。
免許返納手続きには下記のものが必要となります。
運転免許証(有効期限内のもの)
印鑑(地域によっては不要)
運転免許証を紛失してしまった場合などは、住所・氏名・生年月日が確認できる住民票やマイナンバーカードなどが必要になります。
免許返納手続きには手数料もかかりません。
免許返納手続きが完了したあとは当然、無免許状態となるため、手続き場所までは公共交通機関や、家族が運転する車などで行くことをおすすめします。
代理人が免許返納手続きを行うことはできる?
原則、免許返納手続きは、運転免許証を返納する本人のみが行うことができます。
しかし、運転免許証を返納する本人の体調が悪い場合や、手続き場所まで行くことが難しい場合、親族や介護施設の管理者などが代理人として、免許返納手続きを行うことができるようになりました。
代理人を通して免許返納手続きを行う場合は、下記のものが必要となります。
免許返納者本人の運転免許証(有効期限内のもの)
免許返納者本人の印鑑(地域によっては不要)
代理人の本人確認書類(代理人の運転免許証や戸籍抄本など)
誓約書(代理人が記入したもの)
委任状兼確認書(免許返納者本人が記入したもの)
委任状は運転免許センターや警察署に用意されているので、あらかじめ準備しておく必要はありません。
代理人が介護施設の管理者などの場合、免許返納を申請する本人がその施設に入居していることを証明する書類が必要な場合があります。
心配な場合は、事前に問い合わせて確認しておくようにしましょう。
運転経歴証明書って何?
運転免許証を返納した後、身分を証明する本人確認書類がなくなってしまうのは困る…という方は多いかと思います。
そこで利用したいのが、運転経歴証明書です。
免許返納後、この運転経歴証明書の交付申請を行えば、運転免許証と同様に、公的な身分証明書として使うことができます。
運転経歴証明書について詳しく解説していきます。
運転経歴証明書の申請を行うための条件
運転経歴証明書とは、過去5年間分の運転に関する経歴を証明することができる、運転免許証と同じサイズのカードのことです。
運転経歴証明書には運転免許証のような有効期限がなく、更新の必要もありません。
運転経歴証明書の交付申請をするためには、下記の条件を満たしている必要があります。
有効期限内の運転免許証を返納している
免許返納手続きを行ってから5年以内である
免許の取り消し基準に該当していない
免許停止中、又は免許停止の基準に該当していない
再試験の基準に該当していない
所有する免許を全て返納している(普通自動車免許のみ返納し、原動機付自転車免許は返納しない場合などは不可)
また、運転経歴証明書は自主的に免許返納手続きをした人のみ申請することができるので、75歳以上の方に義務化された「認知機能検査」で免許取り消し処分となった場合などは、申請を行うことができません。
運転経歴証明書の申請方法
運転経歴証明書の交付申請は免許返納手続きと同様、お住まいの地域の管轄の警察署や、最寄りの運転免許センターで行います。
免許返納手続きを行った後、そのまま運転経歴証明書の交付申請を行うことが可能で、その場合は下記のものが必要になります。
交付手数料(1,100円)
写真(3cm×2.4cm、6ヵ月以内に撮影したもの)
警察署ではなく、運転免許センターで交付申請を行う場合は、その場で運転経歴証明書の申請用写真を撮影できるので、あらかじめ準備しておく必要はありません。
また、返納する運転免許証の住所に変更が必要な場合は、住民票などの変更後の住所を確認できる証明書類が必要となります。
この運転経歴証明書の交付申請は、運転免許証を自主的に返納してから5年以内であれば、いつでも行うことができます。
免許返納手続きとは別に、後日運転経歴証明書の交付申請を行う場合は、下記のものが必要になります。
交付手数料(1,100円)
写真(3cm×2.4cm、6ヵ月以内に撮影したもの)
住所、氏名、生年月日が確認できる住民票やマイナンバーカードなどの書類
しかし、後日改めて警察署や運転免許センターに行って申請をするのは手間がかかるため、免許返納手続きと同時に行うことをおすすめします。
申請場所や受付時間、必要書類などは地域によって異なる場合があるので、各都道府県警察の運転免許センターに問い合わせて確認しておきましょう。
代理人が運転経歴証明書の申請はできる?
免許返納手続きだけでなく、運転経歴証明書の交付申請も代理人が行うことができます。
代理人が運転経歴証明書の交付申請を行う場合は下記のものが必要になります。
交付手数料(1,100円)
免許返納者本人の写真(3cm×2.4cm、6ヵ月以内に撮影したもの)
代理人の印鑑
委任状兼確認書(免許返納者本人が記入したもの)
誓約書(代理人が記入したもの)
代理人による書類の代筆は原則認められていませんが、怪我や病気などが理由で書類の記入が困難な場合などは、一度運転免許センターに問い合わせてみてください。
運転経歴証明書の特典
運転経歴証明書は公的な身分証明書として使えるだけでなく、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店で提示することで、下記のような様々な特典を受け取ることができます。
タクシーやバスの料金割引
お店での商品代金割引
レジャー、テーマパークの入園料割引
ホテルの宿泊費割引
温泉、銭湯の入浴料割引
美術館、博物館の入館料割引
美容院、理容院の施術料割引
引っ越し料金割引
信用金庫などで定期預金の金利の上乗せ
ただし、特典によっては事前に申請が必要なものや、年齢制限があるものなどもあります。
地域によって特典も異なるため、各自治体のホームぺージを一度確認してみてください。
運転経歴証明書の特典を受け取るためにも、運転免許証は自主返納することが望ましいですね。
まとめ
高齢者は加齢による身体機能の衰えにより、ハンドルやブレーキ操作に遅れが出ることもあり、交通事故を起こしてしまうリスクが高くなります。
後から後悔してしまう事態にならないよう、免許返納について家族ときちんと話し合い、免許返納後の生活も考慮した上で、早めに準備にとりかかることが重要です。
免許返納後は運転経歴証明書や、それによって受けられる特典などをうまく活用しましょう。
また、免許返納によって乗らなくなってしまった車は、廃車買取業者に依頼することで、思っていたよりも高い値段が付くこともあります。
自分の車にどれくらいの値段が付くのか、一度査定を依頼してみてもいいですね。