大雨や台風による車への損害に車両保険は使える?

近年、台風やゲリラ豪雨、集中豪雨などの自然災害が多数発生しています。
大雨や台風によって雨量が増加すると、河川の氾濫や土砂災害、道路の冠水などが起こり、車の損傷や水没などの被害が予想されます。

ここでは、大雨や台風によって車が損傷、水没しても車両保険が適用されるのか、保険金や等級はどうなるのかなど詳しく解説していきます。

大雨・台風時に車両保険は使える?

台風や大雨などの自然災害によって車が損傷、水没しても国や自治体からの補償は基本的にはありません。
では、自動車保険に加入している場合はどうなのか、詳しく見ていきましょう。

車両保険の種類

大雨や台風などの自然災害によって車が損傷、水没した場合、自動車保険の加入時に「車両保険」に加入していれば補償の対象となり、車の修理費用が車両保険から支払われます。
この車両保険には、大きく分けて「一般型」と「エコノミー型」の2種類あります。
「一般型」とは、車の単独事故や当て逃げ事故、転覆など、あらゆる車の損害を補償してくれる保険のことです。
「エコノミー型」は、補償範囲を制限するタイプの保険で、一般型よりも保険金を安く抑えることができますが、単独事故や相手が分からない当て逃げ事故などの補償はありません。

しかし、大雨や台風、洪水、高潮などといった自然災害や、他の車との衝突事故などは、エコノミー型であっても補償の範囲内とされています。
つまり、大雨や台風によって車が損傷、水没してしまった場合は、「一般型」と「エコノミー型」のどちらのタイプの車両保険でも補償を受けることができます。

車両保険で補償される被害内容

では具体的に、車両保険が適用される台風や大雨による被害にはどんなものがあるのでしょうか。

  • 強風によって店の看板や家の屋根瓦などが飛んできて車に傷がついた
  • 強風で木が倒れてきて車に傷がついた
  • 強風にあおられて車が横転した
  • 道路が冠水していて車が水没、浸水した
  • 冠水したトンネルに突っ込んで車が水没、浸水した
  • 駐車している駐車場ごと水没、浸水した
  • 土砂崩れに巻き込まれた

このように、大雨や台風で予想される被害のほとんどは、車両保険の補償対象となります。

車両保険で補償されない自然災害

地震や津波、噴火などによって車が破損したり水没した場合は、広い範囲での大きな災害となり、保険会社も適切な保険料が設定できないため、車両保険が適用されません。
これは保険会社の免責事項で定められています。
しかし、このような免責事項に該当する自然災害時でも、保険を適用できる特約が用意されている保険会社もあるため、気になる方は保険会社に問い合わせてみてください。

災害救助法が適用された場合

大雨や台風によって被害を受けた場合、「災害救助法」というものが適用されることがあります。
「災害救助法」とは、「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかった者の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的」とした法律のことで、自然災害などにより市町村の人口に応じた一定数以上の住家の滅失などがある場合に適用されます。
この災害救助法が適用された地域に住んでいる人が被害を受けた場合、自動車保険や火災保険などの「後続契約の締結手続」や「保険料の支払い」について、一定期間の猶予が設けられることがあります。
詳しくは、加入している保険会社に問い合わせてみてください。

車両保険の補償範囲はどこまで?

大雨や台風による車の被害といっても、水没、他人の車との衝突、土砂災害、飛来物による破損など、様々なものがあります。
どういった被害にどこまで車両保険は適用されるのか、事例別に詳しく見ていきましょう。

大雨・台風によって水没した場合

大雨や台風によって車が水没してしまった場合は、原則、「一般型」「エコノミー型」のどちらの保険でも補償の対象になります。
しかし、エコノミー型の車両保険では、「人為的ミスによる水没被害」は補償の対象外となるため、運転操作を誤り、川に落ちてしまった場合などは「一般型」のみ補償の対象となります。
また、大雨や台風時に冠水している道路に侵入し、それが人為的ミスであると判断された場合も補償の対象外となります。
この審査基準は保険会社によって異なるため、実際に審査を受けるまでは補償の対象となるかどうか分かりません。

大雨・台風によって他人の車と衝突した場合

台風による強風で風に煽られたり、大雨でスリップしたりして他人の車と衝突し、自分の車だけが損傷した場合は、「一般型」「エコノミー型」のどちらでも補償の対象となります。
しかし、相手の車を損傷させてしまった場合は、補償の対象外となることがほとんどです。
また、衝突時に自分や同乗者がケガをしてしまった場合、人身傷害保険や搭乗者損害特約などを付帯していれば、保険金が支払われます。

大雨・台風による土砂災害に巻き込まれた場合

大雨による崖崩れや土石流などの土砂災害に車が巻き込まれた場合は、「一般型」「エコノミー型」のどちらでも補償の対象となります。

台風による風で飛来した物で車が破損した場合

台風などによる強風で木や屋根瓦、看板などが飛ばされ、車のボディやフロントガラスが破損した場合も、「一般型」「エコノミー型」のどちらでも補償の対象となります。
店舗の看板などであれば所有者を特定することができますが、台風による強風は不可抗力であるため、基本的に相手方からの補償は受けられません。
しかし、取れかかっていたり、落下の可能性がある看板を放置していたなど、所有者に責任があると判断された場合は、損害賠償請求が認められるケースもあります。

こういった場合、保険金の対象となるのは車両本体と付属品のみです。
車内の私物に関しては補償の対象外となることがほとんどのため、注意しておきましょう。(保険会社によっては特約で保険金が支払われることもあります)

また、他人の車に損害を与えてしまった場合に補償する対物賠償保険は、大雨や台風による損害は補償対象外にしています。
そのため、台風などで吹き飛んだ自宅の屋根瓦が、他人の車にあたって損害を与えたケースなどでは自動車保険が適用できません。

乗車中の人間の怪我に対する補償は?

車の運転中に大雨や台風に巻き込まれた場合、車の損傷だけでなく、自分や同乗者も怪我をしてしまうことがあります。
台風による強風で、飛んできたものがフロントガラスにぶつかって怪我をしてしまったり、運転中に車が水没し、脱出する際に怪我をしてしまうなどといったケースです。
こういった場合、人身損害保険や搭乗者傷害特約など、乗車中の人間の怪我などを補償している保険を付帯していれば、保険金支払いの対象となります。

車両保険の金額や等級はどうなる?

大雨や台風によって車が損傷、水没した場合に支払われる保険金はいくらぐらいなのか気になりますよね。
加入している保険会社や保険プランによって違いはありますが、一般的にどの程度支払われるのか見ていきましょう。
また、車両保険を使用した場合の保険の等級についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

車両保険で支払われるのは?

車両保険では、大雨や台風などによって損傷、水没した車の損害額から、免責金額(自己負担額)を差し引いた金額が支払われます。
この免責金額は、高く設定するほど保険会社の損失が小さくなるため月々の保険料は安くなり、低く設定すれば保険金がおりる事象が起きた際の支出が大きくなるため、月々の保険料は高くなります。
この免責金額の設定は保険の契約時にすることができ、保険会社によっては免責金額無しで設定できるところもあります。

では、実際に大雨や台風によって車が損傷、水没した場合に支払われる保険金額の例を見てみましょう。

車両保険金額が200万円・免責金額が10万円・車の修理費用が50万円の場合
全損扱いにはならないため、免責金額10万円を差し引いた40万円が、車両金額として保険会社から支払われます。

車両保険金額が200万円・免責金額が10万円・車の修理費用が250万円の場合
車両保険金額の上限を超えているため全損扱いとなり、免責金額は差し引かれず、保険金額満額の200万円が保険会社から支払われます。

このように、車両保険に加入していても修理費用が保険金額を上回る場合は、自己負担額が大きくなります。
水没によるエンジンの故障や、濁流で流されてきた物で車体が損傷するケースなどは修理費用が高額になることが多く、車両保険だけでは修理費用を補えないことがほとんどです。

車両保険を使った場合、保険の等級はどうなる?

大雨や台風などの自然災害で車両保険を使用した場合、保険の等級は1等級ダウン、事故あり係数適用期間1年加算となり、翌年からの保険料が高くなります。
保険の等級や事故あり係数適用期間の変更は、車の損傷や被害の度合いは関係なく、1回使用すれば必ず1等級ダウン、事故あり係数適用期間1年加算となります。
そのため、大雨や台風によって車が損傷、水没した場合でも、車両保険を必ず使わなければならないということはありません。
大雨や台風によって車が損傷したものの、比較的軽い被害で済んだ場合は、翌年の保険金額などを計算した上で、等級を下げて車両保険を使うか、自身で修理するかを検討することをおすすめします。

車両保険を使用した場合、翌年からの保険料がどうなるのかなどは保険会社によって異なるため、確認しておくようにしましょう。
また、車両保険には人への補償責任はありません。
そのため、人身損害保険や搭乗者傷害特約からのみ保険金が支払われた場合は、損害の原因に関わらず「ノーカウント事故」となり、事故がなかったときと同様、次年度の契約の等級が1つ上がります。

まとめ

大雨や台風などの自然災害によって破損、水没してしまった車に対する保証は、自動車保険の契約内容によって異なります。
いざというときに正しく対処できるよう、自分が加入している自動車保険の補償内容を確認しておくようにしましょう。

大雨や台風によって洪水や河川の氾濫が起こり、駐車中や走行中の車が水没、浸水してしまった場合、エンジンなどの機会系統が故障したり、車内のシートの汚れや臭いなどにより、買い替えが必要になることも多いです。
こういった車は中古車として販売することが難しい為、廃車買取業者に買い取ってもらうことをおすすめします。